2013/01/10

情報創造コンサルティング事例その4 「日計管理の活用で利益率の向上」

日計管理を導入し、目標利益を達成するための体制づくりを通して利益率を向上したケース

1会社概要

業種:運輸・倉庫業

従業員:100名

中堅の運送業であるM社は長距離輸送を中心とした営業を行ってきましたが、将来のことを考え新規に倉庫業を併せて営むことになりました。同時に長距離輸送の利益率向上のために日計管理を導入し、日々の管理を徹底することになりました。

2背景と目的

コストアップが原因で長距離輸送の採算は、年々悪化していました。そんな折、ある企業が日計管理で倒産の危機を乗り切った話を耳にしました。話題の会社は得意先の倒産で急速に採算が悪化し、日々の資金繰りが会社の運命を左右する事態にまで追い込まれていました。トップから乗務員の一人ひとりに至るまで、毎日が勝負という環境の中で、自然発生的に取り組んだのが「毎日黒字を達成する」ための日計管理でした。

日計管理のスタートは経費を変動費と固定費に分解することから始まります。月間の固定費は稼働日数で割り算をします。売上と変動費は日々把握する仕組みを作ります。これによって稼働日ごとの採算がつかめるようになります。というと簡単そうですが、話題の会社が比較的早期に日計管理を導入できたのは、近場の配送車両が多く、日々の売上や経費がつかめる体制であったことが大きいのです。そのことはM社が実際に日計管理の導入を試みて初めて分かったことでした。

それでもこの記事に接したM社のトップは、早速自社に日計管理を導入することを思い立ち、経理部長に3か月以内の完成が指示されたのでした。

3取組内容

1費用収益の対応

経理の担当者が指示命令を受けて日計管理に取り組み始めました。ところが近場の配送車両の売上が日々確定出来るのに対して、長距離輸送の車両の売上は日をまたいで発生するために、日々の売上の把握が難しく、変動費との整合性を図ることが思った以上に難しいということに気が付きました。

それでも担当者はいくつかの決め事を通して、日計管理らしいものが出て来るようになりました。初めのうちこそトップは喜んでその数字を見ていましたが、段々と目を通すことも珍しくなってしまいました。それは月次決算と数字の乖離があり、苦労の割には使えないシステムであることがはっきりしてきたからです。

2日計管理の反省

使えない日計管理は、いつしか忘れ去られる運命にありました。なぜそんなことになったのかを考えてみましょう。

  1. 1トップ主導であったため、現場のニーズがそれほど高くなかったこと
  2. 2売上、経費の日々の分解が思った以上に手数であったこと
  3. 3月次決算との乖離が大きく、数字の信憑性が低かったこと
  4. 4出て来た計数とそれに基づく施策の整合性が弱かったこと

どれが決定的とは言えませんが、簡単にいえば全社的にはまだ機が熟していなかったということになるでしょう。新しいシステムの導入は強烈な外圧によるか、内部からの湧き上がるようなニーズによって命が吹き込まれることが多いようです。

3新たなる日計管理の挑戦

日計管理が改めてクローズアップされたのは、得意先の売上減少、燃料費の高騰、労働時間の短縮への対応と経営環境がさらに厳しくなったからです。新しい日計管理の目的は「いかに月間目標を達成するか」に向けられました。

情報創造コンサルタントに依頼し、経理だけでなく現場の責任者を巻き込んで、徹底的な討議を重ねたうえで了解された方式が採用されました。この結果は、月次決算と差があってもかえってこちらの計数の方が実用的であると言われるまでになったことからも分かります。

従来の日計管理が月初からの損益の積み重ねであるのに対して、新しい日計管理では利益目標との差が出るようにしました。目標を達成するために残りの日々でどれだけの利益を出すことが必要かが分かるようにしたのです。

4導入効果

この結果、営業担当、配車担当が協力会社を含めて、どうすれば最善の効率を上げられるかを日々検討するようになりました。営業担当が配車担当にあおられて、新規開拓に走り回る姿も見られるようになりました。

このような運輸部門の姿を見て、倉庫部門にも変化が表れて来ました。倉庫の経費は一見するとコントロールできないように見えますが、現場の責任者が集まり利益目標を達成するための方策を検討するようになりました。その資料として日計管理が使われるようになったのです。

5今後の展望

情報は活用されなければ宝の持ち腐れです。M社において計数管理はしっかりしているという自負がありました。そのことがかえって、現場で使いにくいシステムを作ってしまった原因かもしれません。特に日計管理の場合は、営業担当や配車担当が日々の意思決定に活用してくれなければ意味がありません。

多くの中小企業において売上高の増加は難しい状況にあります。しかし経費は計画的に実行すればまだまだ削減する余地があるのです。日計管理はそれを利用するメンバーが納得できる売上、経費の分解の仕方で進めることがポイントであり、計数に基づいて利益率の向上を目指そうとする行動が生まれてくることが重要なのです。

6情報創造コンサルタントの役割

情報創造コンサルティングは、情報生成、情報加工、情報活用の三つのプロセスから成り立っています。情報生成のプロセスでは、売上がどのような内容で来ているのかという根本的な問いから始めました。ドライバー一人ひとりに対しては変動費の情報収集に対する意識改革から始めました。自分たちの働きが、どのように会社の数字につながっているかを理解するに従い、情報生成の精度が上がっていきました。

情報加工のプロセスは、出て来た結果が使われるかどうかという意味で大切なプロセスです。営業担当と配車担当を含む管理職が、納得がいくまで討議を重ね、自分たちの管理方式を決めていきました。

情報活用のプロセスは終わりがありません。経営環境が急変している現在、経営判断に役立つ計数の早期算出と、その運用支援を行うことが情報創造コンサルタントの役割です。