2013/01/09

情報創造コンサルティング事例その3 「経営に活かす電子文書化への取組」

電子文書化という観点で業務効率化や経営に役立てることを検討するため、プロジェクトチームを立ち上げ、必要なソフトウエアを導入し、運用ルールを決定して業務効率化への基盤作りと環境負荷低減を実現した取組です。

1会社概要

業種:会計事務所

従業員:60

会計・税務・経営のコンサルティングまで幅広いサービスを提供する会計事務所です。

2背景と目的

A社では、環境ISOの認証取得をしており、環境活動の一環として紙削減に取り組んでいました。その中の課題としてFAX受信による紙削減が上がりました。受信FAXの内、約5分の1が営業FAXであり、年間に換算すると約12,000枚にのぼりました。また、FAXの受信のたびに事務職員がFAXを取りに行き、担当者毎に振り分け、担当者に渡すという作業をしており、年間に換算すると約240時間も要していました。

この改善のために、電子FAX導入を検討することとなりました。しかし、単に電子FAXの導入にとどめず、電子文書化という観点で経営に活かすことができないかも検討することとしました。

3取組内容

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1現状把握

現状どのような紙媒体があり、どのような場面で活用されているかを把握します。複数の部門が存在する場合は部門別に把握します。

2プロジェクトチームの発足

現状把握より、単にFAXの紙削減と事務職員の業務効率化の課題以外にも、情報共有の強化と情報を活かすための仕組み作りにも課題があることが分かりました。そこで、これらの課題を解決するために、部門毎のキーマンを選出して、プロジェクトチームを発足しました。

3目標設定

プロジェクトチームでは、まずは将来のなりたい姿・あるべき姿を語り合いました。そこで、将来目指すべき方向は、更なるサービスの向上を図り、よりお客様に喜んで頂けることを再認識し、皆で共有しました。その実現を図るためには、①付加価値の高い業務時間をより多く確保すること(業務効率化)、②情報共有化の強化、③情報の活用方法の教育が必要となります。また、サービス継続のためには、④企業のリスクマネジメントを強化する必要がありました。これらを実現するため、電子文書をどのように活用して行くかの目標について設定を行いました。

4導入ソフトの検討

次に目標を達成するために、導入ソフトの検討を行いました。検討の結果、電子文書の編集に関して機能が充実しており、使い勝手が良く、今後の情報活用等も考慮に入れるとDocuworksを導入することが望ましいという結論に達し、導入しました。

5運用ルールの検討

目標を達成するため、導入ソフトを利用した具体的な運用ルールの検討を行いました。プロジェクトメンバーでソフトを操作し、具体的な運用をイメージして運用方法を検討しました。

6運用テスト

運用方法が決定しても、単純に上手く行くとは限りません。運用テストを行って充分に上手くいくかの確認が必要となります。テスト中は様々なトラブルが発生します。A社でも、当初は「使いづらい」「作業が煩雑になった」等の不満の声も上がりました。また、運用テスト中にFAXが全く受信されない日があり、お客様からFAXを送ったけど返信がない等のトラブルも生じました。それらのトラブルを解決し、安心・安全・信頼が持てるようなシステムであることを皆に理解して頂けるような取組も行っていく必要があります。信念を持って取り組まなければ、新たな仕組みの定着は得られません。

7導入研修

運用テスト段階でのトラブルを解決したら、導入段階への移行となります。導入に当たっては

  1. 1導入の目的
  2. 2導入のメリット・デメリット
  3. 3導入の効果
  4. 4運用方法

についての説明を行います。研修に参加できなかった人については、運用上のトラブルが発生しないよう必ず研修のフォローを行う必要があります。

8運用開始と導入後フォロー

運用開始後数ヶ月間は、仕組み自体を変えるため、皆が操作に慣れるまでは作業効率が下がってしまいます。そのため、不満の声はでてきますが、諦めずに信念を持って地道なフォローを行う必要があります。更に、取組の結果、どれだけの効果が出たのかを示し、有効であることの意識付けを行う必要があります。このプロセスがないと定着しないと言っても過言ではありません。実際に、A社では、FAXの出力枚数が前年対比で約7割削減に成功しております。

4今後の展望

新たな電子文書化ソフトの操作能力も全社的に向上してきており、更なる業務効率化へのワンポイントレッスン研修等も開始しています。実際にOCR(光学文字認識)機能等は業務効率化に大きな影響を与えています。

今後としてはこれらのソフトを活用した更なる情報共有の強化体制の構築について検討して行く必要があります。また、電子文書化に伴い、セキュリティの強化が必要となります。自社の情報管理規定の見直しと共に、漏えいのリスクを軽減するための対策が必要となります。

最後に導入のポイントとなるのは、単なる電子文書化ソフトの導入という観点だけでなく、将来ビジョンを描きながら、経営にどのように活かしてゆくのかを検討し、導入していくことです。

5情報創造コンサルタントの役割

今回の導入には、ユーザー企業、開発ベンダー、情報創造コンサルタント(株式会社ソウケイ・ハイネット)の3社にて推進しました。情報創造コンサルタントとしては、プロジェクトの組織化と運営、現状分析、運用ルールの決定、運用テスト、導入研修、導入後フォローを支援させて頂きました。3社の協力があるのはもちろんのことではありますが、情報コンサルタントとしては、ユーザー企業と開発ベンダーとの橋渡し役をうまく行うことが成功のポイントとなってきます。

以上