2011/01/16

行動を革新する業績管理システムその4「事例:トラック運送業 No2」

3実施内容

1現状分析と全体設計

現状のコミュニケーション、意思決定の場、内容、管理数値を洗い出して、今後の管理体制がどうあるべきかをはっきりさせた。その上でITの活用分野を明確にした。

全体設計図

2財務会計

  • 勘定科目と計上基準の見直しと統一(現金主義から発生主義へ)
  • 経費、売上確定期日の早期化、みなし計上基準(確定後修正)の整理
  • 作成時期の早期化(概算:翌10日、確定:翌20日)

3幹部会の開催

しくみの整備と並行して幹部会を開催するようにし、意識改革を図った。売上実績の確認と変動費管理(高速、燃料、修繕費、安全)の担当を決定し、具体的実行策を決め、行動管理を幹部会の場で行う。また、ドライバーに指導する前に、幹部管理者が積極的に動いているところを示すことを重点に、意識づけを行った。

4業務システムの整備(運行管理・給与)と教育訓練

全システムが老朽化陳腐化しており、入れ替えを実施した。丁寧な設計を行い、パッケージソフトを中心に置き、カスタマイズを行った。これにより、必要管理指標が出力され、運行管理と給与手当との連動が図れるようになった。

5業務ルールの確立と組織化

業務品質を向上させ正しい数値を把握するため、以下を明確にした。

  • 業務の流れ。担当者、および、責任と権限。
  • 日報のチェックとドライバー指導の確実な実施

6意思決定資料の検討と整備

セグメント化と原単位の管理を重点的に行えるように、資料の整備を進めた。

  • 利益計画、月次損益、車両別損益、車両別原単位、得意先別損益、日次売上

7週間ミーティング

日次売り上げに基づく、配車政策、営業管理を中心。継続開催が課題。

8業績検討会

定期開催による意思疎通と幹部役割の明確化と意識付けを行った。また、作成されるようになった意思決定資料を基に、今後の活動と開発の展開について検討を始めた。「景気が悪いから」という言葉を使わないルールの徹底。

4導入による効果(経営者の行動が変わった)

  1. 1社長が自ら動くという言葉を皆の前で言うようになった。
  2. 2他拠点にいた専務が会議に参加し、原単位数値を把握することにより営 部長との営業2トップ体制になり、幹部も会社経営の責任を感じて行動を始めている。
  3. 3業績把握と併せた先行管理による対策の早期実行。

    現状顧客だけでは発展が無く、利益の薄い大口荷主のルート改廃は難しいという一致した認識のもと、社長、専務、幹部が積極的な新規深耕へと踏み出した。

  4. 4幹部が行動を振り返るきっかけに数値を使うようになってきた。
  5. 5車両別損益、原単位、顧客別粗利益などに分解し、現状を正確に把握する。原単位数値が見えるようになり、目標値と改善事項の共有が進んだ。損益分岐点による構造把握と合わせて、経費削減(変動費:修繕、燃料費、高速)の強化をしている。

ITは業務システム及びデータ作成を、正確に効率よく実行するために導入した。「先ずやるべき基本的な事」の実施により、単年度損益の大幅改善ができたが、事業開発、社内改革を進めないと、直ぐに以前の状態に戻ってしまうことが課題として残る。現在は付加価値創造への基盤づくりの段階である。

(文責:久住 久也 2011)