2010/01/16

業務改善とITの活用その1 「課題解決のためにITを活用する」

パソコンの導入と操作リテラシ向上が進み、業務を遂行するレベルの情報化基盤は整ってきた今、ITに期待することは何か。それは、経営課題や、現場で直面している課題を解決するためにITを活用し、企業自身の変革を図ることにある。

販売、生産、物流、会計等、どの業務の高度化にも、ITは切ってもきれない存在である。もちろん、ITを入れただけでは効果が出るわけもなく、しっかりとした業務改善と人材(CIO、社員)の成長、創り出される情報の活用、今ある情報システムの成長が不可欠である。

どの企業でも、規模や対象範囲の大小の差こそあれ、各業務を遂行するための情報システムの導入は進んでいる。そこで、課題解決に役立つ仕組みとなっているか、既存の仕組みをどれだけ使いこなすことができているか、業務から創り出される情報をどれだけ活かせているか、今一度考えていただきたい。

(※経営課題解決の手段としてITを活用するための、全体構想の重要性と、その道筋については、昨年(2009年)コラム「中小企業の情報創造 その6」を参照)

1効率化から戦略的活用と外部への広がり

会計情報は、各業務から生まれる原単位数値とともには経営状況を数値で把握できる羅針盤である。正確な業績を測定するとともに、この羅針盤をどう使うのかを考えなければならない。

会計業務のシステム化を進めようとした時、「会計業務自体は手順がほぼ規定されているので、作業標準化をメインに、効率性とデータの正確性、スピードを確保しよう。」と考えることが多い。初めて会計ソフトを導入する企業の場合は、これが業務課題そのものなので、課題解決のためのIT活用と位置づけることができる。情報システムの導入から部門内業務の改善の段階である。

図1 IT化のステージ(経済産業省 新経済成長戦略18年6月)

次の段階に進む場合、経理部を取り巻く他部署の業務がそれぞれ創り出す情報の生成過程に着目し、どのように整備するかがポイントとなる。

自部門だけの範囲では留まらず、全社横断的に検討しなければならない。企業内の最適化の段階である。すると、自部門業務の経験だけでは判断がつかなくなり、「何をしなければならないのか」が見えなくなる。

その解決のためには、

  1. 1徹底した業務プロセス分析
  2. 2部署間の情報(人、物、金、データ)コミュニケーションの内容を明らかにすることが必要である。これを基礎に、
  3. 3現在の課題とその解決策は何か
  4. 4実行内容をコントロールするために必要な数値は何かを明らかにして、
  5. 5課題解決のために必要な業務改善と標準化
  6. 6人材能力確保
  7. 7情報の蓄積と再利用
  8. 8これらを下支えし実現するための情報システムの整備

を進める。この道筋が「課題解決のためのIT活用」の考え方である。これを基本に、生産性向上、及び、顧客との関係性を重視したIT活用へと発展、成長させる。

(文責:久住 久也 2010)