2008/01/16

情報創造の展開 その2 「ICT革命」

1ICT革命「Information & Communication Technology:情報通信技術」

21世紀に入り世界中で花開いた現在のICT革命は、情報通信の基盤を大きく成長させ、情報通信サービスの高度化を通じて、経済・社会のあり方を大きく変えてきた。ICT革命が目に見える形で経済・社会を変貌させた最も顕著な例は、金融革命にみることができる。マネーの国際間移動と金融のグローバル化は、マーケットにおける金融情報の速やかな伝達とネットワーク取引の即時性を保証するICT革命無しには実現しなかった。

日本国内では、政府主導の「e-Japan戦略Ⅰ、Ⅱ」が終了し、現在「u-Japan政策」が進行中である。「e-Japan戦略」は有線による情報通信基盤整備の側面が大きく、実際、光回線の敷設を受けたインターネット回線網が全国に張り巡らされた。(計画終了時、3590万世帯へ光回線敷設終了)

図1 我が国のIT戦略の歩み

総務省「e-Japan戦略」の今後の展開への貢献 より

 「u-Japan政策」では、光回線などの有線接続に加え、有線・無線の区別のないネットワークへの接続環境への移行を目指している。有線から無線、ネットワークから端末、認証やデータ交換等を含めた連携によって、あらゆる場面で継ぎ目なくネットワークにつながる環境を整備し、その結果、ネットワークが生活の隅々にまで融け込む草の根のようなICT環境を実現しようとしている。

コンピュータとネットワークとの関係にとどまらず、現実空間にいる利用者自身がいつでも好きな時に仮想空間からのサービスを享受できる便利な環境構築へと進んでいる反面、考えておかなければならないことも多い。この点については、当グループ「2008年マネジメントガイド」第3部、2の西垣教授の文面に詳しいので、ぜひお読みいただきたい。

2ICT革命がもたらしたもの

ICT革命は、企業組織、個人が、ネットワークへ参加する壁を劇的に低くした。パソコンを購入してLAN線に繋げば、即、インターネットの世界に出ることができる。ごく一部のパソコン操作技術を持った人によるコミュニティーから、家庭を巻き込み、誰でも参加できる舞台へとインターネットは発展している。

技術的な変化のキーワードとして

  1. 1常時接続(パソコンの電源をいれれば、既に接続が完了している。定額制課金。)
  2. 2高速大容量通信(ストレスを感じることなく大量な情報を閲覧できる)
  3. 3双方向性(Webサイト閲覧から、ブログ、口コミサイトなどへの情報発信へ)
  4. 4広告モデルの発展によるビジネス化(アドワーズ、アドセンスなど)
  5. 5Web技術開発による多様なサービスの提供(Amazone:書籍直販、価格.com:価格比較、直販、Google:検索など)

を挙げることができる。

これらの変化には、「個人ユーザー」と「企業サイド」の2つの側面があり、個人ユーザーの変化は、上記5つの変化と併せてWeb2.0の概念に集約できる。(Web2.0自体の解説は他の書籍に多くあるのでそちらを参照していただきたい。)

Web2.0はインターネットの世界に新たな世論、意見形成を促した。併せて、個人ユーザーが顧客としてインターネットに参加し新たなマーケットが立ち上がった。双方向性の発展から生まれたブログ、口コミサイトなどに集約される顧客の意思は、購買履歴情報と共に企業によるマーケティングの対象ともなった。

企業サイドとしても、顧客と直接つながることができるこの世界の出現に対し、顧客との接点、他の企業との接点として積極的に関わっていく必要がある。

(文責:久住 久也 2008)