2024/10/31

先端ITと企業経営との接点 AIの観点から 2

1.生成AIが抱える課題
 悪意あるユーザーによる誤情報の生成と拡散(フェイク動画)や著作権、人権問題、教育現場における学習など多方面にわたり課題が出てきている。
(1)セキュリティの課題
  議事録や入力文字等、インプットしたデータがChatGPTなど生成AIを運営する会社に渡り、その利用の許可を与えていることになる。それらが基礎となって、他人の答えが導かれることになるので、会社情報、マル秘情報などが、意図せずに流出する危険性がある。
  これらの対策として、入力データの転用禁止や、クローズドな生成AIサービス(自社内で情報が完結する)を提供する企業も増えている。

(2)ファクトチェックの必要性
   弁護士資格や医師資格レベルの知能があるとはいわれているが、あくまでも傾向から導かれるので、正確性は担保されない。AIは「わからない」とは答えない。ファクトチェック(事実確認)が必要である。
(3)社内利用ガイドラインの作成が必要
   ビジネスの場においては手軽に文書を生成してくれるツールとして便利ではあるが、反面、個人情報保護委員会からは、「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」がなされている。入力禁止事項としての、個人情報、企業機密情報、守秘義務情報などの規定や、著作権保護の対象とならないように留意させるなど、社内における規程制定は検討しなければならない。

2.AI活用時代の能力開発
 生成AIで、まともな妥当な答えを得るには、プロンプト構築能力の向上などの技術的な能力開発は必要であるが、企業活動全般においては、将来に渡って、以下のような観点から能力開発を進めていく必要がある。
以下「経済産業省 生成 AI 時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」より抜粋
生成AIにより多くの作業が代替されれば、業務における意思決定や関係構築等の重要度が相対的に増していく。ホワイトカラーの仕事全般においても、定型作業が大幅に削減され、課題設定・解決策の検討や品質確認・レビュー等の業務に時間を費やすこととなり、その結果として生産性が向上していく可能性がある。したがって、今後は、生成AIを利用して仮説検証サイクルを高速で回しながら事業を実施していく力が重要になっていく。
生成AI利用により業務が効率化されることを通じて、人に求められる役割や仕事のやり方が大きく変わり、人間にしかできない、より創造性の高い役割が増えていくと考えられる。経営者はより一層経営に集中し、従業員は顧客に価値を提供するための企画・立案業務や付加価値を生み出す業務を担うようになり、それ以外の作業は AI に任せるような役割の変化が生じ得る。そのため、人間ならではのクリエイティブなスキルや能力(起業家精神等)が一層重要となる。
生成AI時代において、業務の効率化に直面するビジネスパーソンには付加価値を生み出す業務を担うことが広く求められると考えられるため、ユーザーやビジネスに近い役割であるビジネスアーキテクトやデザイナーのスキルを身につけることも重要となる。
人材開発と組織開発と事業開発の3方面からのアプローチが重要である。
デジタルツールを活用して社外の人とコミュニケーションする習慣、反面、ITに偏りすぎたコミュニケーションの危険性の自覚、相互を尊重しながら共創(社内、社外)していく習慣、自ら疑問点を掘り起こし、問題や課題を明らかにして改善する力、やめることを決める力、これらの組織全体としての力の蓄積の必要性を認識していただきたい。

(文責 久住久也 2024)