2009/01/16

中小企業の情報創造その7 「導入事例」

5情報システム導入を成功へ導くために

2製造・卸・小売販売A社の事例

背景

情報活用度ステージ2のA社のシステム更新のきっかけは、受注販売管理システムの老朽化である。受注販売管理システムは個別開発ソフトで電子商取引を実施、商品設計、成分管理は表計算ソフトによる自社製、仕入在庫は手書き台帳で管理を行っていた。生産管理システムはない。システムはそれぞれ単独で動作しデータ連携は無い。

受注販売管理業務はマニュアル化され効率化が進んでいたが、他業務で作成された情報を再度システムへ入力していた。システムから出力される帳票は現場への指示など定型業務に利用できたが、実績分析できる情報を取り出すことに苦労しており営業活動に有効な情報が少なかった。

経営会議へ報告には、システムとは別に記録を行っていた集計表から手作業で集計、加工した帳票を元に作成され二重管理となっていた。

原価は、標準歩留とともに原材料仕入額を管理しているが、業務ごとに入力管理され、変更漏れや間違いが発生し、不正確であった。生産工程別の人件費加工費は管理していない。

A社では受注販売管理システム更新をきっかけに上記課題の解決をはかるために、次世代層を中心に情報プロジェクトを立ち上げた。

導入

社長はプロジェクトオーナーとして後見するが、推進姿勢を強く打ち出している。A社は情報以外にも改善プロジェクトを複数立ち上げ効果をあげている実績がある。

1トップ層の関与と明確な導入推進の意思表示、全社に対する協力指示

プロジェクトでは、現状の課題と経営方針、業務分析による改善点抽出を通して、ITおよび業務プロセスの「やりたいこと」検討した。

3業務分析と業務改善

情報活用度ステージ4を目指してIT全体目標を設定し、そこに向け「できること」を積み重ねるためのステップを中期情報化計画にまとめた。ステップの設定については、組織の成熟度と改善能力、業務改善と現場負担のバランスに特に配慮した。

5導入範囲(対象組織、対象業務)とステップの設定

IT全体目標の要旨は、情報を一元管理し、調達・生産管理の強化による利益原価管理の高度化をはかるとともに、顧客対応と小売業務を強化するものである。

4目的と目標をはっきりさせる

導入初段階であるステップ1では、受注販売管理、成分管理、原価管理を一元化し、事務業務の更なる効率化と経営・業務実績数値の自由な加工、正確な商品別原価の把握と品質保持を成果目標に、業務改善とITの仕様を決定した。情報活用度ステージ2の強化とステージ3へのアップをはかるものである。

2自社の位置する活用ステージの1から2段階上を視野に入れる

それら成果目標の中でも、今回及び今後の改善を可能とし、各業務を結びつける手足をもった基幹システムの安定運用を第一目標としている。それを受けて開発提案依頼書(RFP)を発行し開発ベンダーの選定を行った。

検討およびシステム開発期間を使い第一弾の業務改善を進めシステムの導入を実施した。導入による業務プロセス変更を行うと一時的に現場の負荷は高まるが、人員配置や投入などの調整を行った。現在は運用品質を上げ目標数値を達成するため活動中である。

6導入後も活動目標値を設定し改善を継続する

(文責:久住 久也 2009)