安全アンケートの紹介

国土交通政策研究所「安全に関する企業風土測定ツール」

2011年に正式公開された国土交通省 国土交通政策研究所より、『安全に関する企業風土測定ツール』は、企業の安全に対する考え方や取り組みが現場の従業員に至るまでどの程度浸透しているかを運輸事業者自らが測り、その結果を活用して改善に結びつけるためのツールです。
弊社も開発に携わってきた「安全に関するアンケート調査」の特徴は、「組織に共通の思考を形成する」ためにカギとなる、「経営者や組織・人材などの人的側面」に焦点を当てています。このアンケート調査票の意義や活用事例を紹介します。

既存の制度や仕組みの効果を高めるためのツール

国土交通省 国土交通政策研究所による「運輸安全マネジメント制度」は、保安監査と車の両輪として実施することで、運輸事業者の安全の確保を図るものとされています。
課題として、小規模事業者への適用や、一層の浸透が挙げられます。
また、狙いである「運輸事業者の安全風土の構築、安全意識の浸透」そのものを評価する手法は確立されておらず、このツールは、既存の制度を補完する位置づけともいえ、運輸安全マネジメント制度の効果を高めるために活用できます。

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運輸企業以外での活用

国土交通省 国土交通政策研究所にて開発されたツールであるため、ターゲットは運輸企業です。
しかし、アンケート項目を見れば、運輸企業特有のものはわずかであり、他業種でも十分に活用可能な内容となっています。
ツール開発の考えとして、安全の実現には「経営」が良くなっていくことという視点があります。

特に、運輸企業では以下の特徴があります。
1事務所を離れれば、管理者の目が届かない

2様々なバックグラウンドのメンバー

3シフトがバラバラであり、集めようとしても集まれない

⇒そのような条件の中で、いかにメンバーの安全意識を向上させるのかが課題
⇒生活管理といった一歩も二歩も踏み込んだコミュニケーションを基本としている

製造業の現場においても「安全第一」を実現するための「コミュニケーション」の重要性は各社認識しており、このツールはその質を測定することにもつながっています。

組織として安全に取り組むためのポイント

『安全に関する企業風土測定ツール』の調査票は、以下の図で示している考え方を基本とし、5つの領域と14の区分からなる58の設問で構成されています。

責任や権限、手順書やマニュアルを取り決めて、それを周知・教育するだけで組織が動かないのは周知のとおりです。
この調査票は、組織に共通の思考・行動パターンが醸成されること(統一的性格)が必要です。

そのためには、以下の3点が重要です。
1経営目的が確立・浸透しているか

2中核となる管理者が育成されているか

3現場における意志疎通の「場」は活性化されているか

これらを通じて、社員の共通の思考・行動が醸成されるという考えで作成されています。

「安全」を「見える化」する設問

経営者や一定規模の事業者において安全を統括する部署では、自社の抱える課題を大まかに把握していると思います。
しかし、現場に対し安全を「見える化」し、伝えることは難しいと思います。
このツールを活用することで「安全」を「見える化」することができます。
漠然とした課題が「見える化」されるインパクトは大きく、安全風土という曖昧なものが明示されることで、自社内への問題提起がしやすくなると思われます。
定期的に調査を行うことで、自社の施策の効果測定に活かすこともできます。

ここから、特徴的な領域と設問を解説していきます。

 「トップの価値観と行動の充実と浸透」領域

『経営姿勢への共感』

私の会社は、従業員への満足度向上や社会貢献に、積極的に取り組んでいます

企業は社会の公器であるという、経営姿勢そのものを安全の大前提としている設問です。
従業員を評価することはあっても、従業員から自らが評価される機会が少ない経営者には、「結果がこわい」設問といえます。

『問題解決の意思決定』

私の会社では、現場だけで解決が難しい問題があれば、経営者層がすぐに対応している

「安全第一」を掲げても、実際は経営の効率を優先し、現場からの要望が「放置」され、迅速な対応に欠けている企業はないでしょうか。
そのような企業では、トップが掲げる「安全」に対し、現場の信頼を得られず、この設問の得点は低くなるでしょう。
また、階層間や部門間のギャップから、問題点を浮き彫りにする設問といえます。

 「現場管理の充実」領域

「現場管理の充実」領域では、現場管理を通じて成果をあげるための「コツ」が設問になっています。

単に制度の有無を問うのではなく、管理者と現場の「コミュニケーションの質」の善し悪しや、取り組みの「効果」に対する現場の評価を測定できます。
既存の取り組みにおける課題抽出がしやすくなっている領域です。

『生活管理・健康管理』

私の職場では、個人個人の日常生活や健康管理のあり方について、日ごろから親身な指導が行われている

管理者層と現業層のギャップがどのように測定されるのか興味深い設問です。
それ以上に、経営者層自身が現場を把握している程度も明らかになる設問といえます。

 「職場における積極心」領域

基本行動、職務、人間関係への意識を問う領域です。
日本創造経営グループ『KD-Ⅰ調査』の項目・考え方が採用されています(60の設問のうち、14設問を採用)。

株式会社創造経営センターが行った優秀ドライバーと事故惹起ドライバーの特性について調査をし、KD-Ⅰ調査結果と事故率(走行10万㎞あたりの事故件数)の間には、相関関係があると結論付けられています。

組織全体の集計結果から「集団としての積極心」を測定し、組織全体の活性度を測定します。

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