人に焦点を当てた結果の出る経営理論
1創造経営理論とは
経営は容易に計画どおりには進みません。様々な経営手法が確立され、各企業でも実践されていますが、経営戦略や計画が経営者や幹部の思ったとおりにはなかなか進みません。
その原因は、「人」にあります。近年でも、従業員の能力開発が叫ばれて、人の活かし方や目標による管理、リーダーシップなどが研究されているのも企業経営が「人」に依存するからです。
「企業は人なり」といいます。栄えさせるのも、停滞させるのも、また潰すのも、確かに人です。企業が繁栄するには、「経営者幹部と従業員全体」が「1つの心」になって必ず計画を果たし、価値を高めていくことが必要となります。ただし、問題は、会社側(経営者や一部幹部)が「経営者幹部と従業員全体」が「1つの心」にすることを唱えても、全従業員が「必要性を感じ、本人自身の心からなる自己管理」がないかぎりどうにもなりません。そのため、一般的なコンサルティング手法では、論理的にはすばらしいのですが、結果が伴わないことが多いです。
創造経営理論では一般的なコンサルティング手法だけでなく、個人の意識心理を左右する無意識の世界も考慮しています。つまり、市場戦略や管理手法、業務システム改善などの経営理論・コンサルティング手法に加え、それを実現できる人材育成に焦点を当てた経営理論です。
※アカウンティングやファイナンスはもちろんのこと、バーナードに代表される組織論を中心に、マイケル・ポーター、クレイトン・クリステンセンなどに代表される経営戦略論、コトラーなどに代表されるマーケティング論など幅広く取り入れております。
2創造経営理論の目指す企業とは
1創造経営理論の前提の考え方
13世紀末のルネッサンス以降の『物質文明の進歩』は大量の物を生み出し、より便利な機械を作りだしています。この物の豊かさと便利さ(経済的豊かさ)は人間の欲望を肥大化させ、とどまるところがありません。また、欲望の肥大化は欲望の自制力を失わせ、衝動的な傾向をもたらしています。
こうした生産者を中心とした物質文明は、①公害・環境破壊、②発展途上国における人口爆発、③民族紛争の多発化、④都市化と家族の崩壊等の諸問題を生み出し、限りない資源を奪い合っている現在の資本主義は限界に来ています。
これからは、物とお金の時代から、心の時代へ、つまり、生産者中心の経済から、生活者中心の経済へ移り変わっていかなければならないと考えています。
日本創造経営グループの創業者で前会長の薄衣佐吉(うすぎ さきち)は、昭和23年(1948)以来、数多くの企業の再建をして研究した結果、倒産の原因を分析して、共に生き、共に働く経営(共生共益)を行う会社が繁栄し永続する、創造経営理論を開発しました。
企業が、社会の中で生かされていることを認識し、企業の繁栄と永続する会社経営を実現するには、生活に根ざした経営が求められます。このような考え方は、二宮尊徳や恩田杢、上杉鷹山などが実践しており、奪い合うのではなく、共生共益をベースとし、日本の独自の文化に根ざした経営を行う必要があると考えています。
2経営における人的側面の重要性
企業は、「物」・「金」・「人」・「情報」の経営資源から構成され、その運用結果が経営力として現されます。物的資本を調達し、運用(経営活動)するのは人的資本であり、その構成は、下図の「経営貸借対照表」のとおりです。
経営力の3/4(75%)を構成する人的資本は、下記3点を満たさなければ、本当の意味で活かすことはできません。
- 1社員一人ひとりの働きに対する意欲が活性化されていること。
- 2組織をまとめる管理者が「意思決定力※1」「意思疎通力※2」に基づく責任能力(リーダーシップ)を発揮すること。
- 3経営者が高い理念を発揮し、社員の生きがい・働きがいを開発し、組織を統率すること。
※1: 意思決定力とは、人や組織のために尽くす心が前提となり、そこから長期的・建設的に未来を正しく見極め、具体的に計画し、一人ひとりの力を引き出して、積極的な行動力を発揮していく力のこと
※2: 意思疎通力とは、周囲への深い気づきが前提となり、物事への意識集中や環境対応を通じて環境を掌握して、かつ自己の感情に溺れず、相手への思いやりを持ち、相手の愛を生かすことにより、メンバーとの間に信頼を高めていく力
創造経営理論では、ビジネスモデルなどの戦略や企業組織論といった表面に見えている理論だけでなく、それを考え動かす人的側面にもフォーカスし、永続的に発展することが可能な企業を作り上げることを目指しています。
3創造経営理論の目指す企業
創造経営理論では、従来のように人間を「生産者」という概念ではなく、一人の人間として活動している「生活者」の概念でとらえ、物の生命、人間の生命、自然の生命を活かす経営の実現を目指しています。
創造経営理論では、個人も一人ではなく数多くの人の支えにより生きており(八種の人間関係)、また、企業も数多くの利害関係集団により活動している(六種の利害関係集団)と考えており、その考えを前提に
を実現しようとしています。個人の成長とは自他に対する高い価値観に基づく人格能力(人間性=心)の向上と仕事を遂行する上で必要となる職務能力の向上による個性の発揮であり、企業の成長につながります。企業の成長は取引先への貢献につながり、社会への貢献にもつながり、企業の社会的責任(CSR)も果たすことができます。
創造経営理論では、社会を構成する国家・行政・企業・家庭のいずれも、持続可能な発展を実現し、自然をはじめとして、周りの人々にいかされていること(共生)、それにもとづく創造的生活を通して、周りの人々への貢献(共益)こそ経営体の持続的発展を可能にすると考え、そのような企業作りを目指しています。