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2011/7/6 事故と企業風土との関連 〜自動車運送業におけるKD−1調査の活用〜

事故と企業風土との関連   〜自動車運送業におけるKD−1調査の活用〜

 


 

 以下は、優秀ドライバー、事故惹起ドライバーのKD−T調査結果における差異をみた事例である。
ドライバー約200名の年あたり事故件数を算出した(勤続3年未満のドライバーは、技術が未熟な場合があるため対象から除外している)。その中から、優秀ドライバー55名、事故惹起ドライバー44名を抽出したものである。


 

 

※KD−T調査は、9領域60項目からなっている。9つの領域その考え方は次のとおりである。
「人の心は、その人が生まれてから今日に至る時間の流れにおいて、家庭、学校、職場、地域社会、さらに大自然という環境の中で形成されてくる。この関係を、基準・天候・一日の時間・余暇にいたる領域でとらえることができる。この9領域との対応の仕方を見て、本人の行動の背後にある心の働きを見ることができる。」
KD−T調査について詳細な内容は、日本創造経営協会編「人づくりの経営」または「人づくりの教室」(いずれも中央経済社)を参照頂きたい。

 

優秀ドライバーと事故惹起ドライバーのKD−T調査結果を、9領域で比較してみたのが次の表である。

 

基準

職場

家庭

時間

社会

地域

学校

天候

余暇

全体得点

優良

0.57

0.63

0.96

0.65

1.02

0.95

0.86

0.53

1.00

47.1

事故

0.38

0.48

0.88

0.44

0.94

0.92

0.70

0.31

0.74

37.8

差(優-事)

0.19

0.15

0.08

0.21

0.08

0.02

0.16

0.22

0.26

9.29

 

また、9領域を構成する60項目の得点を比較し、その差が0.3ポイント以上ある項目をピックアップしたのが以下の表である。

 

食事

即行

会議

職仲

欠勤

就業

帰宅

税金

休日

居酒屋

カラオケ

パチンコ

優良

0.55

0.75

0.89

0.89

1.09

1.00

0.55

1.11

0.56

0.64

0.96

1.71

1.02

事故

0.25

0.43

0.27

0.59

0.64

0.41

0.14

0.75

0.16

0.34

0.59

1.18

0.61

差(優-事)

0.30

0.31

0.62

0.30

0.45

0.59

0.41

0.36

0.40

0.30

0.37

0.53

0.40

 

 全体得点は優秀が47.1点であるの対し、事故惹起は37.8点と約9.3ポイントの開きがある。領域別で見ると、特に基準、時間、天候、余暇領域など、「自己管理」に関する領域において差が見られた。
 また、項目別でみると、項目ごとの質問主旨からみて、能力の高め方(良いものは即行動に移すなど)、生活管理の心がけ(食事への配慮、欠勤への意識、朝の目覚め、まっすぐ帰宅、休日の過ごし方など)、職場での過ごし方(会議の活かし方、職場仲間との交流、終業への意識・満足感など)、明るく楽しい人柄(酒やカラオケなど楽しむ時は和気あいあいなど)に特徴がある。



 

 ドライバー個人の特徴を中心に見てきたが、実際には本人の努力だけでなく、運行管理者・配車係が事故を起こさないように繰り返し話しをすることや、班などのチームの中で集まってコミュニケーションを図り、集団の中での信頼関係ができてきて、班長などの行動見本に影響を受けて、新人はじめ他のメンバーが基本動作や作業手順を実践するようになった結果として事故が起きなくなるものである。


 このように、優秀ドライバーを生み出していくためには、組織を上げて無事故の体質づくりをしていく必要がある。基準行動を実践することが積み上がり、本人がドライバーの基本やメンバーの中での自分の立場や集団行動を少しずつ自覚しながら、「事故を起こしてはいけない」という気になってくる。荷物を積み、運転をして、自分一人で仕事しているような気持ちになっていると事故を起こすものである。繰り返しコミュニケーション、声かけ、点検、点呼、中間チェックなどで教育をしていかないと人間は弱いもので継続できない。また事故の問題は一度減少したからと言ってそれで安定しない。少し手を抜くとすぐ元に戻ってしまうものである。


 これらが企業風土や安全風土と呼ばれるものの実態であり、管理・マネジメントの質、経営の質である。現場のドライバー個人の問題だけでなく、管理者の責任能力、経営者の統率力・目的創造性がカギを握っている。これにより、事故が少なく、優秀ドライバーが核となりチームが活性化している組織は、経営者・管理者の経営意思、安全方針・施策や現場の変化にシャープに反応する。生き残っていく企業は第一線の反応が違うのである。

 


 

 事故の問題を組織の問題と捉え、事故率とKD−Tによる企業性格(企業風土)の関係を表したのが以下の図である。
「相手の意思を理解して行動できる人」の割合が高まるほど、企業レベルが自己中心から自立準備、自立、開拓レベルへと向上する。
 企業を取り巻く外部取引先集団からどの程度信頼を受けているか、企業内部での上下、左右のコミュニケーションはどうか、働く人の人間性(社会的成熟度からみた質的な構成)はどうなっているかを総体としてとらえている。この得点は企業風土、経営の質を表すものである。
 KD−T調査に基づく企業性格診断ついて詳細な内容は、前述の日本創造経営協会編「人づくりの経営」または「人づくりの教室」(いずれも中央経済社)を参照頂きたい。


事故率とKD−Tとの関係

テキスト ボックス: 十万キロ当り事故率

 


 組織のメンバーの質的な構成から安全マネジメントの目標を考えていく場合、以下の「企業性格と経営意思疎通分類表」がガイドラインとなる。
 自動車運送事業での企業性格診断の結果は、大半が自立準備性企業である。この状態では事故が減らず、一旦減ったとしてもまた元に戻るということを繰り返してしまうことが多い。意思が通じない組織では、安全方針を掲げ、施策を打っても、現場第一線まで浸透・徹底させることはできない。


 意思が通じる組織へと質を高め(組織・経営の質を高め)、事故を減らしていくためには、自立性企業のレベルに引き上げていく必要がある。また他社と差別化されたサービスを提供できるようになるためには、さらに開拓性企業の段階までレベルアップしていく必要がある。
 そのカギは、創造者(問題があれば進んで取り組み、組織を統率してゆく力のある人)を、管理者、ドライバーから計画的に育成していくことである。


従業員の人間性による企業性格と経営意思疎通分類表

集団

性格

企業性格

従業員の人間性構成

意思疎通内容

企業性格内容

創造者

自立者

非自立者

協同的

集団

感化性企業

 

100%

 

 

・メンバー間の信頼関係が形成され、組織への帰属意識が高く、経営目的に対し協同する、まさに理想の集団である。

・取引先と共生と共益を実現する企業

開拓性企業

 

30%

以上

40%

以上

30%

以下

・信頼関係と組織への帰属意識が高まり、経営者の意思どおりのチーム(集団)行動をする。

・外部環境の変化に創造的適応をする企業

相互的

集団

自立性企業

 

25%

以上

30%

以上

45%

以下

・信頼関係と帰属意識が形成されつつあり、経営者の総合力・統一力のもとで経営意思にそったチームとしての組織行動ができる。

・企業の主体性を発揮することができる企業

自立準備性

企業

7.5%

以上

12.5%

以上

80%

以下

・信頼と帰属意識が希薄で、個人あっての集団という考えが強く、経営者の意思を下部に伝えるのに苦労する。

・取引先に従属する企業

寄生的

集団

自己中心性

企業

3%

以下

7%

以下

90%

以上

・信頼と帰属意識に欠け、意思の不疎通をきたし、不平不満が蔓延し、管理がずさんとなり貸し倒れ、不良品が多発する。

・個人の利益追求を中心とした企業

 

 

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